文科省概算要求を分析する

 次年度予算の概算要求が8月末、出そろいました。全省庁の総額は過去最高の117兆円。防衛省の8.5兆円に対し、文科省の文教関係は約4兆。20年度に初めて防衛予算が文科省予算を上回ってから、わずか5年で防衛予算要求額が文教関係予算の要求額の2倍になっています。
 文教関係の内容は以下の通り。

【教職員定数】 「小学校における35人学級の推進等、義務標準法の改正に伴う定数増」3637人、「小学校における教科担任制の拡充」2160人、「生徒指導担当教師の全中学校への配置」1380人、「多様化・複雑化する課題への対応」476人等、合計7653人。全国に公立小中学校はおよそ3万校あり、7653人の増員では4校に1人程度です。
 生徒減等による自然減等を8703人としており、差引1050人の減としていますが、長時間過密労働の解消のためには、生徒が減っても職員を減らさないでほしいというのが現場の願いです。そのためには標準定数法に定める基礎定数を増やすことが重要であり、国会での法改正を視野に入れた改善が急務です。

【教職調整額の13%への引上げ】 すべての教員の賃金改善となるものであり、重要です。しかしこのことと引き換えに長時間過密労働が温存されるならば問題です。教職調整額は教育労働の特殊性に基づき必要なものですが、時間外労働のブレーキになるのは残業代です。定率である教職調整額の増額だけでは「定額働かせ放題」の構造が強化されるので、同時に残業代支払いも求め続けることが重要です。

【「新たな職」の創設】  本県では主幹教諭の高校への配置が問題になっていますが、主幹教諭と教諭の間にさらにもう一つつくるべきと中教審は述べています。これはますます職階制を強め、競争をあおって、多くの教職員の賃金を切り下げるものです。モデルとなっているのは東京都で、ここではすでに先行して「主任教諭」との名称で設置されています。職階は、校長、副校長、主幹教諭、「主任教諭」、教諭、「実習助手」・寄宿舎指導員の6段階で、賃金もそのまま6段階とのこと。教諭の賃金は導入前よりも2万5千円引き下げられ、初任給で19万円とのこと。このため「主任教諭」をめざして競争が広がりその試験倍率は3倍に。ただ「主任教諭」の賃金も、導入前の教諭の賃金より低いそうです。
 良い教育をおこなうためには、子どもたちのことに集中できなければいけませんが、お金や地位、名誉などに追い立てれるようなしくみがあったのでは、教育は大きくゆがめられます。まず教職員の賃金は高いものであるべきですし、職階のタテの関係ではなく、同僚のヨコの関係をつくっていく方が、特に教育はより上手くいくものです。

【担任手当】-危険な罠-  文科省概算要求には、学級担任手当の新設が盛り込まれています。担任の業務は忙しいので、合理的なようにも受け取られがちですが、この手当には危険な罠が潜んでいます。
 原資が限られ、減らされる圧力がたえずある下では、この手当、他のどこかを削るのとセットになると予想されます。担任の数は多数なので、そこにプラスするには、他の手当を削る程度ではすみません。基本給または教職調整額の削減がセットになると予想しておく必要があるでしょう。担任をしていて今と同額、してなければ今より下がるということにもなりかねません。
 そもそも学級づくりは、担任だけで行えるものではありません。学年主任、副担任、学年団、養護教諭、事務職など、多くの職員が関わって連携を取ってこそ上手くいきます。副担任や学年所属の方々の中には家庭の事情や本人の健康上の事情を抱えていて、担任をしたいができないという方もおられます。誰もが忙しい時は自分が最も大変だと思いがちですが、他にも大変な方はたくさんいます。また、若い人の精一杯と中高年の精一杯は当然違います。若い人が「働きが悪い」と思っても、精一杯頑張っている中高年の方は大勢います。そこは長いスパンでの凸凹と考えるべきです。
 担任手当が入ったならば、「手当をもらっている人がまずやるべき」という思いが生じます。同僚としてのつながりを分断して、互いに競わせ、批判させる、息がつまるような職場の光景が、担任手当の甘い誘惑の先に待っています。