序詩

町を歩くとき
ふと言葉が
美しく並ぶことがある
家に帰るまで
覚えておこうと思うのだが
それらはひとつとして
残ってくれたことがない
釣り落とした魚のように
果てしなく美しい
言葉だったに違いない
なんとか憶い出そうと
ペンを執るのだけれど
鱗一片すら浮かんではこない

食卓がわりの机
無造作に散らかったその上に
新しい原稿用紙がのせられ
その上をペンが走る
時にはどうしてもペンがすすまない時もある
こうして僕の詩は書かれる
けれど今日のその上は
心ある友からの手紙で埋められ
優しい言葉で満ちている
こうして僕の詩は書かれる
その深い生命をこめて
泌々と読まれろ 僕の詩